経営事項審査制度の改正について

既にご案内のとおり、国土交通省は、公共工事の入札に参加する建設業者に受審が義務付けられている経営事項審査の審査基準の改正内容を十月十五日付の官報で告示され、平成二十三年四月一日から適用される。
今回の経営事項審査制度の改正は、近年の建設投資の減少とそれに伴う競争の激化等を踏まえ、公共工事における適正な企業評価を実施する観点から、今年三月に発表した「入札契約制度の更なる改善」に基づき、中央建設業審議会において検討が行われ、とりまとめられた。
審査基準の改正事項は、①技術者に必要な雇用期間の明確化、②完成工事高の評点テーブルの上方修正、③再生企業に対する減点措置、④社会性(W点)の評価項目の追加、の四点である。
その具体的内容は、①では、評価対象とする技術者を「審査基準日前に六カ月を超える恒常的雇用関係にある者」に限定した。これによりペーパーカンパニーが不正に高得点を取得できた技術者の名義借りを防止する。なお、高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度対象者は、雇用期間が限定されていても評価対象に含めることとされた。
②では、建設投資の減少に応じて完工高の評定テーブルを補正し、全体としてバランスのとれた評価を行い、適切な入札機会が確保できるよう平成二十二年度の建設投資見込み額を基に算出したX1点とZ2点の予想平均点が制度設計時の七〇〇点になるよう底上げするもので、各社がランク低下を避けるために無理な受注を重ねることを防ぐねらいがある。
③では、債権カット等により地域の下請企業等に多大な負担を強いた再生企業について、一定の減点措置を創設。民事再生企業と会社更生企業を対象に、再生期間中はW点で一律六〇点の減点評価を行う。なお、再生期間終了後、営業年数評価はゼロ年から再スタートとなる。
④では、地域防災への備えの観点から建設機械の保有数と、多くの都道府県が発注者別評価点で評価している品質と環境の国際規格であるISO9001とISO14001の認証取得を加点対象とした。
機械保有については、建設機械抵当法で定める機械のうち、災害に役立つショベル系掘削機、ブルドーザー、トラクターショベルの所有台数に応じて加点(一台一点、最高十五点)。なお、経審の有効期限(一年七カ月)中の使用が定められているリースの建機も同様とした。また、ISOの認証取得については片方の取得で五点、両方の取得で一〇点が加点されるが、これらの措置によりW点は最高二五点が加算され、W点の現行百七五点から二〇〇点に上がることとなり、総合評価に占めるW点のウエートが突出しないよう、項目追加後のW点に一定の圧縮を行い、一九〇点にとどまるように調整される。
ところで、今年五月の政府の行政刷新会議の事業仕分けで、国交省所管財団法人の建設業情報管理センターが行っている監理技術者資格者証の交付が「廃止」、全国建設研修センターが行っている監理技術者講習も「義務付け廃止」と判定され、改善を求められていることから、国交省は、建設業の技術者制度のあり方を検討する有識者会議「技術者制度検討会」をさる十一月に設置し、その検討を開始した。検討項目は、結論が急がれる資格者証交付と講習についての方策を固め、併せて現場専任配置の内容など技術者制度全体の見直しを議論し、来春に報告をまとめるとしている。
建設業は、今まさに激動に見舞われている。次代のキーワードとなるビジネスのヒントを全管連あげて研究してまいりたい。

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