水ビジネスについて
水ビジネスの世界の有力企業であるフランスのベオリアとスエズの2社は「水メジャー」と呼ばれる。2社とも浄水設備の製造から上下水道施設の建設、完成後の事業運営まで一貫して行う体制を持つ。水を供給している人口は世界延べ90カ国、計2億人以上で、2008年の売上高はともに1.5兆円を超す。
特に、ベオリアは現在、64カ国で海外事業を展開。多くは人口5万人未満の市町村が対象だが、中国上海市では2002年に上水道事業を50年間にわたって共同運営する契約を結び、市民220万人に水道水を供給している。2006年には日本の埼玉県と広島市での下水処理場の維持管理業務を相次いで受注した。
このような急成長が続き、2025年には100兆円規模に達すると見込まれる水ビジネス市場への本格参入に向け、官民連合「チーム水ジャパン」の旗振り役を担う東京都の取り組みが本格化してきたと9月の日刊建設工業新聞で報道された。
東京都は、水道局の第三セクターである(株)東京水道サービスを活用してこの巨大市場への参入を目指す方針を今年1月に決定し、4月には猪瀬副知事を座長とする「海外事業調査研究会」を立ち上げ、事業参入に向けた具体的な検討を開始。主な対象国を、マレーシア、インド、インドネシア、ベトナム、モルディブのアジア5カ国に絞り込み、8月にはマレーシアに調査団を派遣。同国政府関係者と意見交換し、事業ニーズなど情報収集に努めた。今秋にかけて他の4カ国でも現地調査を予定している。
今後は、政府系機関や国内外の民間企業等と特定目的会社を組成して参入する公民連携の手法を想定している。
さて、水ビジネスの市場拡大が注目されているのは海外だけではない。国内の自治体でも、今後、施設の維持管理・運営業務等を外部に委託することが増えるとみられるためだ。
水道事業者は、人口減少時代の到来、節水社会による使用料の減少等により料金収入が伸び悩む中、地震や風水害への災害対策、経年施設の更新・再構築、水質問題への対応などに迫られており、大変厳しい経営環境にある。また、2007年問題といわれた職員の大量退職による水道技術の継承問題への対応など、多くの課題に直面している。
こうした中、将来に向けて持続可能な水道事業を確立していくためには、経営基盤、技術基盤の強化のため、広域化と官民連携により水道事業を支える体制を構築することが必要である。
その実現のために、厚労省水道課では、全国水道事業体に対し、「地域水道ビジョン」の策定をさらに推し進めている。詳しくは、厚労省ホームページの調査報告書「平成21年度水道事業運営に係る業務評価手法等に関する調査」を参照されたいが、先日、全管連四国ブロック会議に粕谷水道課長をお招きして講演いただいた際に、地元のご自身の関係する水道事業体の地域水道ビジョンを見て、そのポイントをチェックするよう指導いただいた。チェック項目は、①水需要の将来見通しが分析・評価されているか、②財政収支の将来見通しが分析・評価されているか、③事業課題は明確か、④施策目標の達成期限が明確か、等々。
それらをしっかり検証し、地元の管工事組合として策定内容の充実を働きかける。水道は、市民にとって、最も地域に密着したサービスであり、事業なのだから、そこに大きなビジネスチャンスが必ず生まれる、と。
ところで、本会では、機関誌「全管連ジャーナル」に本年4月号から管工事組合と水道局とが連携して頑張っている地域に赴き、小泉技術参与に取材いただき紹介している。ぜひともご一読願いたい。